「なんとなく体がだるい」「動悸やめまいが続く」「夜眠れない」──。
このような症状が続くと、「自律神経失調症かもしれない」と感じる方も少なくありません。
確かに、自律神経の乱れが原因で体調に影響を及ぼすことはありますが、似たような症状を引き起こす他の病気が隠れていることもあります。
本記事では、医師が自律神経失調症と症状が似ている身体の病気についてわかりやすく解説します。体調不良が続いて不安に感じている方は、受診の参考にしてみてください。
自律神経失調症とは?
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経という相反する働きをする2つの神経のバランスが崩れ、心身に様々な症状が現れる状態を指します。病気の名前というよりは、「状態」を表す言葉であり、明確な診断基準があるわけではありません。
主な症状
- 慢性的な疲労感
- 頭痛、肩こり
- 動悸、息切れ
- めまい、ふらつき
- 胃腸の不調(下痢・便秘など)
- 不眠や中途覚醒
- 情緒不安定、不安感
これらの症状は日常生活にも大きく影響しますが、検査をしても「異常なし」と言われることが多いのが特徴です。
症状が似ていて間違われやすい身体の病気
自律神経失調症と診断される前に、実は別の病気が潜んでいたというケースは少なくありません。ここでは、代表的な病気をご紹介します。
1. 甲状腺機能異常(バセドウ病・橋本病)
甲状腺ホルモンは代謝をコントロールする重要な役割を担っています。
ホルモンが過剰になる「バセドウ病」、不足する「橋本病(慢性甲状腺炎)」のいずれも、自律神経失調症に似た症状を引き起こします。
共通する症状:
- 疲労感
- 動悸・息切れ
- 体重の増減
- 睡眠障害
- 不安感や抑うつ気分
特に女性に多く、更年期症状やストレスと誤認されやすい傾向があります。血液検査で診断が可能なので、気になる方は一度相談してみることが大切です。
2. 貧血(特に鉄欠乏性貧血)
鉄分不足によって血液中の酸素が不足し、脳や全身に十分な酸素が届かなくなる状態です。
間違えられやすい症状:
- 疲れやすさ
- めまい、立ちくらみ
- 頭痛
- 息切れ
- 不眠、集中力低下
自律神経の乱れと考えられがちですが、貧血は血液検査で確定できます。月経のある女性は特に注意が必要です。
3. 更年期障害
40代半ば〜50代にかけて、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により起こる心身の不調です。
類似する症状:
- のぼせ・ほてり
- 発汗
- 疲労感
- 不安感、イライラ
- 動悸や不眠
自律神経の乱れとも密接に関係しているため、「どちらの影響なのか」がわかりにくくなることもあります。婦人科での相談やホルモン検査が有効です。
4. 心疾患(不整脈・狭心症など)
動悸や息切れ、胸の違和感などは、自律神経失調症の症状とも重なりますが、心臓の異常が原因となっている可能性もあります。
特徴的な症状:
- 突然の強い動悸
- 胸の圧迫感、痛み
- 安静時でも脈が乱れる
- 運動後の息切れが回復しにくい
年齢や生活習慣によりリスクが高まるため、心電図などで早期に原因を特定することが重要です。
5. 低血糖や血糖値の変動
糖尿病でなくても、血糖値の変動によって体調が不安定になることがあります。
自律神経失調症と似ている点:
- 手の震え
- 冷や汗
- 動悸
- 倦怠感
- 意識がぼんやりする感じ
食事や間食のタイミング、糖質摂取の影響などにより起こる場合があるため、栄養状態や生活習慣の確認もポイントです。
まとめ
自律神経失調症は、ストレスや生活習慣の影響などで起こりやすい身近な不調です。
しかし、似たような症状をもつ身体の病気が隠れていることもあり、適切な検査や診察によって初めて本当の原因がわかるケースも少なくありません。
体調がすぐれない状態が長期にわたり改善しないときには、一人で抱え込まず医療機関へご相談ください。
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