【医師監修】「冬になると気分が沈む…」それは“冬季うつ”かもしれません

寒さが深まり、日が短くなる冬の季節。
「なんとなくやる気が出ない」「朝起きるのがつらい」「気分が落ち込む」──そんな不調を感じたことはありませんか？
それは、単なる冬の疲れではなく、“冬季うつ（季節性情動障害）”が関係しているかもしれません。
冬季うつは、秋から冬にかけて発症し、春になると自然に改善することが多い、季節性のうつ病です。
この記事では、冬季うつの原因や症状、そして心と体を整えるための具体的な対策について解説します。

冬季うつとは？

冬季うつ（季節性情動障害：Seasonal Affective Disorder）は、日照時間の減少が大きく関係していると考えられています。
太陽の光を浴びる時間が短くなることで、脳内の「セロトニン（心の安定を保つ神経伝達物質）」が減少し、気分の落ち込みや意欲の低下が起こりやすくなります。
また、睡眠リズムを整える「メラトニン」の分泌も乱れやすくなり、眠気や倦怠感を引き起こすこともあります。
このように、冬季うつは光・ホルモン・自律神経のバランスが崩れることで発症する心の不調です。

冬季うつの主な症状

精神的な症状

• 気分の落ち込み、憂うつ感
• やる気・興味の低下
• イライラや焦り、不安感
• 集中力の低下
• 自己評価の低下（「自分はダメだ」と感じる）

身体的な症状

• 睡眠時間が増える（過眠）
• 食欲の増加、特に甘いものや炭水化物を食べたくなる
• 体重増加
• 倦怠感や疲労感が取れない
• 朝起きるのがつらく、昼間も眠い

特に「眠っても疲れが取れない」「休日でも気分が晴れない」という場合は、冬季うつの可能性があります。

冬季うつになりやすい人の特徴

• 日光を浴びる時間が短い（在宅勤務・夜型の生活など）
• 寒冷地など、日照時間が少ない地域に住んでいる
• 睡眠リズムが乱れやすい
• 過去にうつ病や不安障害を経験したことがある
• 真面目で責任感が強く、ストレスをためやすい性格

また、女性の方が男性よりも発症しやすいとされ、ホルモンバランスの変化が影響していると考えられています。

冬季うつの原因

1. 日照時間の減少

冬は日照時間が短く、光を浴びる時間が減ります。
光不足によってセロトニンが減少すると、気分の安定が保ちにくくなります。
また、メラトニンの分泌が増えすぎることで、眠気やだるさが強く出ることもあります。

2. 気温の低下と運動不足

寒さで外出が減ると、活動量が低下します。
運動不足によって血流や代謝が低下し、ストレスホルモンが蓄積しやすくなります。

3. 自律神経の乱れ

寒暖差や気圧の変化が大きい冬は、自律神経が乱れやすくなります。
その結果、頭痛や肩こり、胃の不調など、体の症状を伴うことも少なくありません。

冬季うつを防ぐ生活習慣

1. 朝の光を浴びる習慣をつける

朝日を浴びることで、セロトニンの分泌が促され、体内時計が整います。
出勤前や朝食後の10分でも構いません。天気が悪い日でも、屋外の光は十分な効果があります。
※光療法（ライトセラピー）という医療的治療法も存在します。医師の指導のもとで行うことで効果が期待できます。

2. 規則正しい生活リズムを保つ

夜更かしを避け、毎日ほぼ同じ時間に寝て起きることが大切です。
特に休日の「寝だめ」は体内リズムを乱す原因になります。

3. 栄養バランスを意識した食事

脳の働きを助けるビタミンB群、鉄分、オメガ3脂肪酸、トリプトファンなどを含む食材を積極的に摂りましょう。
（例：青魚、豆類、卵、ナッツ、緑黄色野菜など）

4. 適度な運動で血流を促す

ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、セロトニンを増やす効果があります。
寒い日は室内でできる運動を取り入れてもOKです。

5. ストレスを溜め込まない

一人で抱え込まず、家族や友人、専門家に相談することも大切です。
「話すこと」は心の負担を軽くする第一歩です。

医療機関への相談を考えるタイミング

次のような症状が2週間以上続く場合は、早めに医療機関に相談しましょう。

• 気分の落ち込みが続く
• 朝起きるのがつらく、外出を避けてしまう
• 何をしても楽しく感じられない
• 食欲や睡眠に変化がある
• 無気力や不安感が強い

早期の受診によって、薬物療法・カウンセリング・光療法などの治療で改善が期待できます。
「冬だから仕方ない」と我慢せず、専門家に相談してみましょう。

まとめ

冬季うつは、寒さや日照不足による一時的なメンタル不調です。
日常のちょっとした工夫で予防・改善が可能です。
朝の光を浴びること、生活リズムを整えること、そして心が疲れたときにはしっかり休むこと。
その積み重ねが、冬の季節を穏やかに過ごすための大切な一歩になります。
気分の沈みが続く場合は、どうぞ一人で悩まず、医療機関へご相談ください。

あわせて読みたい
>【医師監修】寒さと気分の関係──冬季うつを防ぐための生活リズム
>【医師監修】季節性うつとは？症状、原因、治療法、対処法を解説
>【医師監修】冬の眠気と食欲の正体？“冬季うつ”の可能性チェック！