近年、「なんとなく体がだるい」「気分が落ち込みやすい」「集中力が続かない」といった不調を訴える働く方が増えています。
こうした症状の背景には、仕事や家庭のストレス、人間関係、生活習慣など様々な要因が関係していますが、意外にも「オフィスのエアコン環境」が、見過ごされがちな原因の一つになっていることをご存じでしょうか?
本記事では、エアコン環境が心身に与える影響と、メンタル不調との関係について医師が医学的な視点から解説し、今すぐできるセルフケアや受診の目安についてご紹介します。
1、オフィスでよくある「エアコン不調」とは?
まず、オフィスで働く人の中でよくある“エアコンによる体調不良”には、以下のようなものがあります:
- 肩こり・頭痛
- 手足の冷え
- 倦怠感(けんたいかん)
- 睡眠の質の低下
- 気分の落ち込みやイライラ
一見すると冷房による“冷え”の問題のように思えるかもしれませんが、実はこれらの不調は自律神経の乱れと密接に関わっています。
2、エアコンと自律神経の関係
人間の体は、外気温に応じて体温を調整するために自律神経が働いています。
ところが、夏の暑さとエアコンの冷気による急激な温度差は、自律神経にとって大きな負担となります。
例えばこんな状況、思い当たりませんか?
- 通勤で炎天下を歩いた後、冷房の効いたオフィスに入る
- 室内と外気の温度差が5〜10度以上ある
- 一日中、冷房の風が直接体に当たっている
- 空調が効きすぎて、オフィスでは常に寒さを感じている
このような環境の中で長時間過ごすことで、自律神経が乱れやすくなり、体温調節がうまくいかなくなる・内臓の働きが低下する・睡眠リズムが乱れるなどの影響が出てきます。
これが積み重なることで、身体だけでなく心の不調にもつながっていくのです。
3、自律神経の乱れがメンタルに与える影響
自律神経は、私たちの感情や精神状態とも深くつながっています。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、次のようなメンタル不調が起こる可能性があります:
- 不安感が強くなる
- 気分の浮き沈みが激しくなる
- 集中力の低下
- やる気が出ない
- 朝起きるのがつらい
- ちょっとしたことでイライラしてしまう
このような状態が続くと、「仕事に行きたくない」「職場の人間関係がつらい」といったストレスも増幅され、うつ病や適応障害の初期症状として現れるケースもあります。
4、エアコンの影響を軽減するセルフケア
エアコンが効いたオフィスで快適に過ごしながらも、体調とメンタルを守るために、以下のようなセルフケアを取り入れてみましょう。
① 体を冷やしすぎない工夫を
- カーディガンやひざ掛けで保温する
- 冷房の風が直接当たらない席に移動するか、風向きを調整
- 温かい飲み物を意識して摂る
② 室内外の温度差を5℃以内に保つ
冷房の設定温度を高め(26〜28℃)、外との温度差が大きくなりすぎないように調整しましょう。
③ 規則正しい生活で自律神経を整える
- 朝起きたら朝日を浴びる
- 湯船につかる
- スマートフォンの使用は就寝1時間前までに
④ デスクでできる簡単なストレッチ
長時間同じ姿勢でいると血行が悪くなり、冷えや肩こりの原因になります。
1時間に1度は席を立つ、軽い肩回しや足のストレッチを行うだけでも効果があります。
受診を検討すべきサインとは?
セルフケアを試しても改善しない場合や、以下のような状態が2週間以上続いている場合は、一度医療機関の受診を検討してください。
- 朝起きるのがつらく、出社できないことがある
- 仕事への意欲がわかず、ミスが増えている
- 常に不安感や焦燥感がある
- 夜眠れず、疲れが取れない
- 身体的な症状(頭痛、胃痛、吐き気など)が出ている
これらは、心療内科や精神科で相談できる症状です。
「こんなことで相談していいのかな?」とためらわず、まずは話を聞いてもらうことが大切です。
5、まとめ
冷房の効いた快適なオフィスでも、知らず知らずのうちに私たちの心と体には負担がかかっています。
エアコン環境が引き起こす体調不良やメンタル不調は、放っておくと深刻化する恐れもあります。
「ちょっとおかしいな」と感じたときこそ、自分をケアするサインです。
医療機関では、こうした日常の不調にも丁寧に対応しています。
「なんとなく体調がすぐれない」「気持ちが落ち込みやすい」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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