夏の夜、気温が下がらず「寝つけない」「何度も目が覚めてしまう」と感じたことはありませんか?特に近年の猛暑では、就寝中もエアコンなしでは耐えられないような夜が続き、眠りの質が低下しやすくなっています。
本記事では、猛暑によって引き起こされる不眠と、それに伴う心身の疲労やメンタルへの影響について、医師の視点から解説します。暑さによる不調を「夏バテだから仕方ない」と放置してしまう前に、必要に応じて受診も検討できるよう、わかりやすくご案内します。
暑さが引き起こす「不眠」のメカニズム
深部体温が下がらないと、眠りにくくなる
私たちの体は、眠りに入る前に自然と深部体温(体の内側の温度)を下げる仕組みになっています。この体温の低下がスムーズに起こることで、脳と体が休息モードに切り替わり、自然な入眠が促されます。
しかし、外気温が高く、寝室内の温度も下がらない状態では、深部体温が十分に下がらず、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。

睡眠の質が悪化すると、日中にも影響が
夜にしっかり眠れないと、当然ながら日中に以下のような症状が出やすくなります。
- 倦怠感・だるさ
- 集中力の低下
- イライラしやすい
- 食欲の低下
これらは「夏バテ」と呼ばれることもありますが、睡眠不足が原因であるケースも多く見られます。
エアコンの使い方がカギ! 快適な睡眠環境のポイント
「我慢しない」冷房の活用を
エアコンの使用を「健康に悪いのでは」「電気代が気になる」と避ける方も少なくありませんが、睡眠を守るための冷房はむしろ必要です。
日本睡眠学会などでも、熱帯夜には適切な冷房使用が推奨されています。具体的には以下のような工夫が有効です。
- 室温は26〜28℃程度を目安に
- タイマーではなく「微風で一晩中つける」
- 風が直接当たらないよう風向きを調整
- 扇風機を併用して空気を循環させる

冷えすぎを防ぎつつ、熱がこもらない環境を整えることが、ぐっすり眠るための第一歩です。
寝具やパジャマにもひと工夫
- 吸湿・放熱性の高い寝具(麻や冷感素材など)
- 通気性の良いパジャマ
- 冷感枕やアイスノンの活用
小さな工夫の積み重ねが、体感温度を下げて深い睡眠をサポートします。
暑さによる睡眠不足が「心」に与える影響
睡眠不足が自律神経を乱す
睡眠は、自律神経のバランスを整える役割も担っています。十分な眠りがとれない日が続くと、交感神経が優位になりやすく、以下のような「心の不調」につながることがあります。
- イライラしやすい
- 気分が沈みがち
- 物事に対して無気力になる
- 突然不安に襲われることがある
こうした状態が長引くと、「夏季うつ(夏型季節性うつ病)」のような状態を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。

睡眠とメンタルヘルスの深い関係
不眠とうつ病・不安障害との関連は、さまざまな研究でも示されています。特に女性はホルモンバランスの変化も影響しやすく、更年期や生理前と重なることで症状が悪化することもあります。
「暑くて寝られないだけ」と思っていても、実は心身に大きな負担がかかっている場合があります。
受診を検討すべきサインとは?
以下のような状態が続いている場合は、医療機関への相談を検討してみてください。
- 眠れない日が2週間以上続いている
- 日中の倦怠感・集中力の低下がつらい
- 気分の落ち込みや不安が目立つ
- 食欲がなくなり体重が減ってきた
- イライラがひどく人間関係に影響している
医師による診察では、必要に応じて睡眠薬や漢方薬の処方、生活習慣の見直し、メンタル面のサポートなどが受けられます。
無理に我慢せず、「夏バテだと思っていたけど病院で相談してよかった」と感じる方も少なくありません。
医師に相談する際のポイント
「いつから眠れないのか」
「1日何時間くらい寝ているか」
「夜中に目が覚める頻度」
「日中に出ている症状(倦怠感、気分の変化など)」
「エアコンや寝具の工夫内容」
このような情報を整理しておくと、医師との相談がスムーズになります。初診の前にメモをとっておくのもおすすめです。
まとめ
猛暑による睡眠の質の低下は、私たちの体と心に大きな影響を与える可能性があります。眠れない夜が続くと、疲れがとれず、心のバランスも崩れやすくなります。
冷房や寝具を上手に使って睡眠環境を整えることはもちろん、体調不良が続くときには医療機関に相談することも大切です。特に、気分の落ち込みや日中の支障がある場合には、早めの受診をおすすめします。
「夏だから仕方ない」と我慢せず、心地よい眠りと健やかな毎日を守るために、適切な対処とサポートを受けましょう。
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