「最近よく眠れない」「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚めてしまう」といった悩みは、多くの方が経験しています。不眠の原因は多岐にわたり、環境や生活習慣、ストレス、身体の病気や精神的な問題などが考えられます。
その中でも、自律神経の乱れが睡眠障害に大きく関わっていることが知られています。自律神経は私たちの身体のさまざまな機能を調整する役割を担い、昼間の活動と夜間の休息を切り替える重要な働きを持っています。
本記事では、医師が不眠と自律神経失調症の関係についてわかりやすく解説します。眠れないと感じる時、その原因が自律神経の乱れによるものかもしれません。慢性的な不眠に悩む方や原因を知りたい方に向けて、症状の特徴や対処法についてご紹介します。
自律神経とは?心身のバランスを保つ見えない司令塔
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つに分かれます。
- 交感神経:活動時や緊張時に働き、心拍数の増加や血圧上昇、呼吸の促進など身体を「戦うモード」に切り替えます。
- 副交感神経:休息時やリラックス時に優位となり、心拍数を下げたり、消化を促進したりと身体を「休むモード」に導きます。
この2つの神経がバランスよく切り替わることで、健康な体調と質の良い睡眠が保たれています。
自律神経失調症とは?自律神経のバランスが崩れた状態
自律神経失調症は、自律神経の働きに乱れが生じて、心身のさまざまな不調を感じる状態を指します。身体の調整機能がうまく働かなくなるため、倦怠感、頭痛、めまい、動悸、胃腸の不調、そして睡眠障害などの症状が現れることがあります。
特に、慢性的なストレスや生活リズムの乱れが原因となることが多く、30~60代の女性に多く見られます。
不眠と自律神経失調症の関係
自律神経失調症によって、交感神経が過剰に働き続けてしまうと、リラックスして眠るための副交感神経の働きが十分に及ばず、眠りにくくなります。
また、夜間に何度も目が覚める、浅い眠りが続くといった症状も現れやすくなります。こうした不眠は「睡眠の質の低下」として、日中の疲労感や集中力の低下を招くことも多いです。
不眠の見極め方:こんな症状が続くなら注意を
不眠の原因が自律神経の乱れかどうかを見極めるポイントとして、以下の症状に注意してください。
- 寝つきが悪く、30分以上眠れない
- 夜中に何度も目が覚める
- 朝早く目が覚めてしまい、その後眠れない
- 日中に強い眠気やだるさが続く
- ストレスや緊張感が強く、心身が休まらない感覚がある
これらの症状が数週間以上続く場合は、不眠の改善に専門的なサポートが必要な可能性があります。
自律神経の乱れによる不眠への対処法
まずは生活習慣の見直しが大切です。以下のポイントを意識してみてください。
- 規則正しい生活リズムの維持:毎日同じ時間に起床・就寝することで、自律神経のリズムを整えます。
- 適度な運動:日中に体を動かすことで交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズになります。ただし就寝直前の激しい運動は避けましょう。
- リラックス時間の確保:寝る前に深呼吸や軽いストレッチ、ぬるめの入浴などで副交感神経を優位にしましょう。
- カフェインやアルコールの摂取制限:特に夕方以降は控え、睡眠の妨げを減らします。
- スマートフォンやパソコンの使用制限:寝る1時間前から画面を見ないようにして、脳を休めます。
それでも眠れないときは、医療機関での相談を
生活習慣を整えても改善しない場合や、不眠による日常生活への影響が強い場合は、医療機関への受診をおすすめします。
医療機関では、不眠の原因を詳しく調べるために問診や必要に応じた検査を行い、適切な治療法を提案します。
自律神経の乱れが関わっている場合は、生活指導に加えて薬物療法や心理的アプローチを組み合わせることもあります。
受診時に伝えると良いポイント
受診する際は、以下の点を整理しておくと医師とのコミュニケーションがスムーズです。
- 不眠の症状が始まった時期や経過
- 睡眠の状態(寝つき・途中覚醒・早朝覚醒など)
- 日中の体調や気分の変化
- 生活習慣やストレスの状況
- 服用中の薬やサプリメント
まとめ
慢性的な「眠れない」症状は、自律神経の乱れが関係していることがあります。自律神経失調症による不眠は、生活リズムやストレス管理の改善が大切ですが、自己判断で放置せず、症状が続く場合は医療機関での相談をおすすめします。
睡眠の質を整えることは、心身の健康回復に欠かせません。適切な情報とサポートを得て、毎日の生活をより快適に過ごしましょう。
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