企業を率い、社会の第一線で活躍する女性経営者は、強い責任感と行動力をもって日々多くの判断を下し、組織や人を導く立場にあります。その一方で、「人に弱音を見せられない」「相談できる相手がいない」といった孤独感を抱えながら、心の不調に気づかないまま日常を過ごしている方も少なくありません。
本記事では、医師の視点から、女性経営者が抱えやすいストレスの特徴や、見落とされやすい“がんばりすぎ”のサイン、そして適切な対処法について解説します。
ストレスが積み重なる背景とは?
1. 高いプレッシャーと多重な責任
経営者としての意思決定や業績管理に加え、部下の育成や対外的な調整まで、多岐にわたる業務を一人で背負うことも多いのが経営層の特性です。さらに、家庭を持つ女性であれば、育児や家事、介護といった「もう一つの責任」が加わることも少なくありません。こうした「多重責任」は、慢性的なストレスの要因となります。
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2. 「弱音を吐けない」という思い
周囲からの期待や、「自分がしっかりしなければ」という意識が強くなりがちな女性経営者は、心に不調を抱えていてもなかなか人に打ち明けられません。その結果、気づかないうちに心の限界を超えてしまうことがあります。
3. 成果主義の中での孤立感
経営という結果が重視される立場では、「過程を評価されない」「相談してもわかってもらえない」という感覚が、孤立感や無力感を助長します。ストレスの出口が見つからないまま心の負荷が蓄積していくケースが多く見られます。
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女性経営者にみられやすい心の不調の特徴
「気づかれにくい不調」が多い
女性経営者の場合、心の不調が身体症状として現れることもあります。以下のような状態が続いているときは、注意が必要です。
・朝、起きるのがつらく、仕事に向かう気力が湧かない
・よく眠れず、睡眠の質が下がったと感じる
・以前楽しめていたことに興味を持てなくなった
・些細なことで怒りっぽくなる、涙もろくなる
・頭痛や胃の不快感など、身体の不調が続く
・「自分なんて」「どうせ誰も理解してくれない」と感じる
これらは、うつ病や燃え尽き症候群(バーンアウト)の初期症状である場合もあります。特に、外からは順調に見えても、心の中では不安や疲労感が積み重なっている方に多く見られます。
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心の不調に気づいたときの対応
1. 自分を責めない
心の不調を感じたとき、「自分が弱いからだ」「甘えているのでは」と考えてしまう方が多くいらっしゃいます。しかし、これは誰にでも起こりうる“こころのサイン”です。責任感の強い方ほど症状を見過ごしてしまいやすいため、まずは自分を責めずに現状を受け止めることが大切です。
2. 専門機関へ早めの相談を
医療機関での相談は、「特別なこと」ではありません。心療内科や精神科では、現在のストレス状況や症状を丁寧にヒアリングし、必要に応じてカウンセリングや薬物療法などを行います。症状が軽いうちであれば、生活習慣の見直しだけでも改善が期待できる場合があります。
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3. 「意識的に休む」ことを日常に
経営者の方ほど、スケジュールに空白を作ることに抵抗を感じやすいものです。しかし、意識的に「休む時間」を取り入れることは、心身のパフォーマンス維持のために極めて重要です。短時間でも構いませんので、静かな場所で一人になる時間や、趣味に没頭する時間を持つようにしましょう。
まとめ
女性経営者の皆さんは、多くの責任を背負いながら日々努力を重ねておられます。しかし、その頑張りの裏で、心や体に無理が生じてはいないでしょうか。
ストレスや心の不調は、「気の持ちよう」や「根性」で乗り切れるものではなく、れっきとした健康問題の一つです。放置せず、早い段階で気づき、適切に対処することで、心身のバランスを取り戻すことができます。
少しでも「いつもと違う」と感じたときは、ご自身の健康を守る第一歩として、医療機関への相談を検討してみてください。心の健康は、あなた自身だけでなく、組織や周囲の人々にとっても大切な土台となります。
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