最近、夜なかなか眠れない。眠っても途中で目が覚めてしまう――。こうした不眠の悩みを抱える方は少なくありません。特に、仕事で責任ある立場にある管理職の方の中には、慢性的な睡眠の質の低下に悩んでいる方が多くいらっしゃいます。
ストレスが原因かもしれないと感じつつも、「自分が弱いだけかもしれない」「病院に行くほどではないのでは」と、我慢しながら日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、管理職に多い「マネジメントストレス」による睡眠トラブルについて解説します。不眠のメカニズムやセルフチェックのポイント、受診の目安についても詳しくご紹介します。
管理職に多い睡眠トラブルとは
不眠症の主な症状
不眠症とは、以下のような状態が続き、日中の生活に支障をきたしている状態を指します。
- 入眠障害(寝つきが悪い)
- 中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)
- 早朝覚醒(予定より早く目覚めて眠れない)
- 熟眠障害(ぐっすり眠った感覚がない)
これらの状態が1ヶ月以上続き、日中の集中力の低下、イライラ、疲労感、抑うつ気分などがみられる場合、不眠症と診断される可能性があります。
管理職に特有のストレスとは?
管理職には、一般社員とは異なる独特のプレッシャーや責任があります。例えば:
- 部下の育成や評価に関する悩み
- 業績やチーム目標に対するプレッシャー
- 上司と部下の板挟みになるストレス
- 長時間の労働や慢性的な残業
これらのストレスは、自律神経のバランスを乱し、睡眠に直接的な影響を与えることがあります。特に「寝る前まで仕事のことが頭から離れない」「深夜でも業務連絡が来る」といった状況では、脳が休まらず、眠りにくくなるのです。

ストレスと睡眠の関係:自律神経がカギ
人間の体は、「交感神経」と「副交感神経」という2つの自律神経によって調整されています。
日中の活動時には交感神経が優位に、夜間の休息時には副交感神経が優位になるのが理想的な状態です。
しかし、ストレスを感じていると、夜になっても交感神経が優位なままとなり、体が「戦闘モード」から切り替わらず、眠れなくなってしまいます。
管理職に多いタイプは、「責任感が強く、ストレスに気づきにくい」という傾向もあります。つまり、体は緊張状態でも「自分はまだ頑張れる」と無理を続けてしまい、不眠が慢性化するケースも少なくありません。
どのようなときに受診すべき?
不眠が一時的なものであれば、生活習慣の見直しで改善することもあります。しかし、以下のような場合は、医療機関への相談が推奨されます。
- 不眠の状態が2週間以上続いている
- 日中の眠気や集中力低下で業務に支障が出ている
- 気分の落ち込みやイライラが悪化している
- 睡眠薬やアルコールに頼る習慣ができている
- 頭痛・肩こり・動悸など身体症状も出てきた
これらの症状がある場合、心療内科やメンタルクリニック、睡眠外来などで相談することで、症状の原因を医学的に確認し、適切な治療が可能です。

睡眠トラブルに対するセルフケアのヒント
医療機関を受診することはとても大切ですが、同時に、日常生活の中でできる工夫も睡眠改善に役立ちます。以下のようなポイントを試してみてください。
寝る前の“頭のスイッチオフ”を意識する
- スマートフォンやパソコンの使用は、就寝1時間前までに終える
- 就寝前に予定や不安を書き出し、頭の中を整理する
- 照明は暖色系にし、徐々に明るさを落とす
緊張を緩めるリラックス習慣
- 深呼吸やストレッチで副交感神経を優位に
- 入浴はぬるめのお湯で15分ほどが目安
- カフェインやアルコールの摂取は就寝4時間前までに控える
「頑張りすぎない」意識を持つことも重要
責任感が強い人ほど、「睡眠時間を削ってでも成果を出すべき」と考えてしまいがちです。しかし、質の良い睡眠は、仕事のパフォーマンスや判断力の維持にも直結しています。
「眠れない自分を責めない」「眠れない日は無理に寝ようとせず、静かな音楽を聴くなどしてリラックスする」といった考え方も、心の緊張をやわらげてくれます。
まとめ
マネジメント業務を担う管理職にとって、ストレスによる睡眠トラブルは珍しいことではありません。
しかし、放置すれば心身に大きな負担をかけ、仕事や私生活にも影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、管理職に多い睡眠トラブルの原因や、ストレスと自律神経の関係、セルフケアの方法、受診の目安について解説しました。
「最近よく眠れない」と感じている方は、まずはご自身の心身の状態を振り返ってみてください。そして、一人で抱え込まず、早めに医療機関へ相談することを検討してみましょう。適切なサポートを受けることで、質の良い睡眠を取り戻すことができます。
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