女性経営者として日々さまざまな責任を担い、組織や従業員、そして家庭を支える立場にある方々のなかには、「ふとした瞬間に力が抜ける」「何もかもが重荷に感じる」といった心の疲れを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような状態が続くと、知らず知らずのうちに「燃え尽き症候群(バーンアウト)」に陥ってしまうことがあります。バーンアウトは決して一部の人に限った話ではなく、責任感が強く、周囲に配慮しながら走り続けてきた方ほど、発症しやすい傾向があります。
本記事では、医師の立場から、女性経営者に多いバーンアウトの兆候やその背景、そして心のエネルギーを守るための予防法について解説します。
燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?
燃え尽き症候群とは、長期的なストレスや過労、精神的な疲弊の結果として、心身ともに極度の疲労状態に陥り、仕事や日常生活への意欲を失ってしまう状態を指します。正式な診断名ではありませんが、医療現場でもしばしば扱われる心の不調の一つです。
特に、以下の3つの要素が典型的な兆候として挙げられます。
・情緒的消耗(感情が枯渇し、エネルギーが尽きた感覚)
・脱人格化(他人や仕事に対する関心の低下、無関心や冷淡な態度)
・達成感の低下(努力しても成果を感じられない、無力感)
女性経営者が陥りやすい背景とは?
1. 完璧主義と責任感の強さ
女性経営者の多くは、理想や目標に対して高い基準を持って行動しています。その一方で、「弱音を吐けない」「自分がやらなければ」という意識が強くなり、限界を越えて頑張りすぎてしまうことがあります。
2. 孤独感と相談のしにくさ
組織のトップとしての立場上、悩みを打ち明ける相手が見つからず、精神的に孤立しやすい環境にあることも、バーンアウトのリスクを高める一因です。
3. ワークライフバランスの不均衡
家庭や育児の責任も担う中で、プライベートの時間が削られ、休むことへの罪悪感を感じてしまう女性も多くいます。その積み重ねが、心身の疲労として表れていきます。
こんな兆候に心当たりはありませんか?
以下のような症状は、燃え尽き症候群の初期サインである可能性があります。
・朝起きるのがつらく、仕事に行く気力がわかない
・小さなトラブルにも強いイライラを感じる
・人との会話や対応が億劫になり、距離をとりたくなる
・昔は楽しめたことに興味が持てなくなった
・「何のために頑張っているのかわからない」と感じる
・夜になっても気持ちが落ち着かず、眠れない
これらのサインが2週間以上続いている場合は、早めに医療機関に相談することをおすすめします。自分で対処できる範囲を超えている可能性があるためです。
バーンアウトの予防法
バーンアウトを防ぐためには、心身の状態を日常的に整える「メンタル・メンテナンス」が大切です。以下のポイントを意識していただくことをおすすめします。
1. 「休むこと」に罪悪感を持たない
まず大切なのは、意識的に休むことです。経営者という立場では「常に動き続けなければ」と思いがちですが、休息は回復と創造の源です。あえて「予定に休む時間を入れる」くらいの感覚が理想的です。
2. 自分を客観視する「振り返り」の時間をつくる
日々の出来事や感情を日記に記録することで、自分の状態に気づきやすくなります。「今日は疲れやすかった」「この発言にストレスを感じた」など、心の動きを見つめ直す習慣は、早期のセルフケアに役立ちます。
3. 一人で抱え込まない
信頼できる友人、家族、同業者、またはカウンセラーなど、話を聞いてくれる相手を持つことは、精神的な安全基地となります。医療機関では、心理カウンセリングや認知行動療法(CBT)など、状況に応じた対応が可能です。
4. 専門家のサポートを積極的に利用する
不調を感じたら、まずはかかりつけの医師やメンタルクリニックに相談してください。多忙な方ほど受診を後回しにしがちですが、心の健康も身体の健康と同様に「早めの対応」が鍵です。
まとめ
燃え尽き症候群は、真面目で努力家な方ほど陥りやすいものです。特に女性経営者のように多方面に責任を担っている立場の方は、心の声に耳を傾けることが何よりも大切です。
「まだ大丈夫」と感じていても、不調の兆しは誰にでも訪れるものです。ご自身の限界を知り、無理をしすぎる前に、ぜひ一度専門機関へご相談ください。あなたの心が健やかであることが、周囲の人々にとっても大きな支えとなります。
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