介護職の夜勤は、身体的な負担だけでなく、心の健康にも大きな影響を与えます。夜勤が続くことで生活リズムが乱れ、気分の落ち込みや疲労感といった心身の不調を感じる方が少なくありません。こうした症状は「夜勤うつ」と呼ばれ、早めに気づき適切な対処を行うことが大切です。
本記事では、医師による解説をもとに、夜勤うつの特徴や原因、セルフチェックの方法、そして具体的な対処法についてわかりやすく紹介します。夜勤の負担で悩む方やそのご家族が、必要な受診行動につなげられるようサポートする内容です。
夜勤うつとは?夜勤と心の不調の関係
介護職は夜勤を含む勤務が多く、生活リズムが不規則になりがちです。この不規則な勤務形態は、心身に大きな負担をかけ、特に「うつ症状」のリスクを高めることが知られています。こうした夜勤を伴う仕事で起こるうつ症状を「夜勤うつ」と呼びます。
夜勤うつは一般的なうつ病と比べ、夜勤特有の環境ストレスや睡眠リズムの乱れが大きく関係しているのが特徴です。夜間に働くことで、体内時計(概日リズム)が乱れ、自律神経のバランスが崩れやすくなります。その結果、疲労感や集中力の低下、気分の落ち込みなどの症状が現れやすくなります。
夜勤うつは、介護職だけでなく医療現場や交通業界など夜勤勤務がある職種全般で見られますが、介護職は身体的負担も大きいため、特に注意が必要です。
夜勤うつの主な症状とセルフチェックポイント
夜勤うつでは、以下のような症状が現れやすくなります。
気分の落ち込みや憂うつ感
何をしても楽しく感じられない、悲しい気持ちが続くことがあります。
疲れやすさや倦怠感
休んでも疲れが取れず、体がだるく感じます。
集中力や注意力の低下
仕事中にミスが増えたり、物忘れが増えることがあります。
睡眠障害
夜勤の影響で眠りが浅くなったり、日中に強い眠気を感じることがあります。
食欲の変化
食欲が落ちる、あるいは逆に過食になる場合があります。
不安感やイライラ感
小さなことで不安になったり、感情のコントロールが難しくなることがあります。
セルフチェックポイント
次の項目に当てはまるものがあれば、夜勤うつの可能性があります。
- 夜勤のある勤務を続けてから、気分の落ち込みや疲れを感じている
- 睡眠の質が悪く、疲労感がなかなか取れない
- 集中力が続かず、仕事に支障が出ている
- 不安やイライラが増え、心配事が増えた
- 食欲の変化や体重の増減が気になる
これらが複数当てはまり、2週間以上続く場合は医療機関への受診を検討してください。
夜勤うつが疑われる場合の受診の目安
夜勤うつは、早期に対応することで症状の改善が期待できます。以下のような場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
- 気分の落ち込みが強く、日常生活に支障が出ている
- 睡眠障害や食欲不振が続き、体調不良を感じる
- 自分だけで気分をコントロールできず、不安感や焦燥感が強い
- 職場でのミスが増えたり、仕事のパフォーマンスが著しく低下している
- 自殺や死にたいという考えが浮かぶことがある
医療機関では、問診や心理検査を行い、必要に応じて薬物療法やカウンセリングを提案します。早めの受診が回復の鍵です。
夜勤うつの対処法
生活リズムの見直し
規則正しい睡眠時間を確保する
夜勤後はなるべく同じ時間に寝起きし、体内時計を整えましょう。
睡眠環境を整える
遮光カーテンや耳栓を利用し、質の良い睡眠をサポートします。
適度な運動を取り入れる
軽いウォーキングやストレッチで体調を整え、ストレス発散に役立てます。

バランスの良い食事を心がける
栄養の偏りを防ぎ、免疫力の維持や精神状態の安定に寄与します。
職場でできること
夜勤のシフト調整を相談する
連続夜勤を避けたり、勤務時間の調整を職場に相談しましょう。
休憩や休暇を積極的に取る
無理せず休むことが、心身の回復には欠かせません。
同僚や上司に相談する
一人で抱え込まず、周囲の理解を得ることが大切です。
医療機関でのサポート
専門的なカウンセリング
心理士や精神保健福祉士による相談が受けられます。
薬物療法
必要に応じて抗うつ薬や睡眠改善薬が処方されることがあります。
生活指導
医師が生活リズムの改善やストレス対処法をアドバイスします。
夜勤うつを予防するためにできること
- 夜勤前後の十分な休息を取る
- 規則正しい生活リズムを意識する
- ストレスをためこまないよう、趣味やリラクゼーションの時間を持つ
- 職場のサポート体制を活用する
これらは症状を未然に防ぐためにも重要です。
まとめ
介護職の夜勤は体力的にも精神的にも負担が大きく、「夜勤うつ」を引き起こしやすい環境です。夜勤うつは、生活リズムの乱れや睡眠不足、自律神経のバランスの崩れから起こる心の不調であり、早めの気づきと適切な対処が回復のポイントとなります。
セルフチェックで気になる症状があれば、無理をせず医療機関の受診を検討してください。生活習慣の見直しや職場での支援を受けることも大切です。医師による診察やカウンセリング、必要に応じた薬物療法など専門的なサポートも利用しながら、心身の健康を守っていきましょう。
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