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【医師監修】親の介護、看取り、死別と更年期うつ

人生の中で誰もが避けて通れない出来事として、「親の介護」「看取り」「死別」があります。これらの経験は、身体的、精神的に大きな負担を伴い、特に更年期を迎える年代の女性にとっては、その影響が深刻化することがあります。更年期にはホルモンバランスの変動による心身の不調が多くなる一方で、親の介護や死別といった人生の大きな転機が重なることがあります。
このような状況下で起こりやすいのが「更年期うつ」です。更年期うつは、心身のバランスが崩れたときに現れる気分の落ち込みや疲労感で、家庭や社会生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
本コラムでは、親の介護、看取り、死別と更年期うつの関係、そしてその乗り越え方について解説します。

更年期とその影響

更年期とは、女性が閉経を迎える前後の数年間を指し、通常40代後半から50代前半にかけて始まります。この時期には、卵巣機能の低下によりホルモン(特にエストロゲン)の分泌が減少します。エストロゲンの減少は、心身にさまざまな影響を及ぼし、ホットフラッシュや不眠、頭痛、イライラ、抑うつ症状などが現れやすくなります。また、この時期に合わせて、親の介護や家族の死別が重なると、心身への負担は倍増します。

親の介護と更年期うつ

親の介護は、身体的にも精神的にも過酷な仕事であり、特に女性が担うことが多いです。介護の負担は、生活の質に大きな影響を与えます。介護をしていると、心身の疲れやストレスがたまり、身体的には睡眠不足や食事の不摂生、精神的には孤独感や無力感を感じることがあります。さらに、更年期のホルモンバランスの乱れにより、感情が不安定になりやすく、介護のストレスと相まってうつ症状が引き起こされることがあります。

介護者は、親の健康状態や生活状況を常に気にかけ、最善を尽くそうとするあまり、自己犠牲の気持ちを抱えがちです。そのため、自分の感情や身体のケアを後回しにしてしまうことが多く、心身のバランスが崩れ、うつ状態に陥ることがあります。また、介護は予想外の問題が起こることが多く、解決方法が見つからないときには、無力感が募りやすく、ストレスが蓄積されます。

親の看取りと死別

親の看取りは、多くの人にとって非常に辛い経験です。愛する人を失うことは、深い悲しみと共に精神的な衝撃を与え、心に大きな空洞を残します。看取りの過程自体も、肉体的に疲れ果てるほどのストレスを伴いますが、死別後に残る感情的な痛みもまた、非常に大きなものです。

特に更年期を迎える年代では、ホルモンバランスが変化しているため、感情の起伏が激しくなり、感情をコントロールすることが難しくなることがあります。この時期のうつ症状は、単なる気分の落ち込みにとどまらず、疲労感や興味・喜びの喪失、焦燥感、集中力の低下など、生活全般に支障をきたすことがしばしばあります。親の死別が重なることで、感情がさらに複雑になり、深い悲しみや喪失感が長期間続くこともあります。

更年期うつの兆候と症状

更年期うつは、身体的な症状や心理的な症状が複合的に現れます。以下は、よく見られる兆候と症状です:

●気分の落ち込み:日常生活に対する興味を失い、悲しみや無力感にとらわれる。
●不安感や焦燥感:未来に対する不安や、物事をうまく進められない焦りを感じる。
●疲労感や倦怠感:身体的にも精神的にも疲れ、日常の活動をこなすことが困難になる。
●睡眠の問題:不眠や過眠が現れ、体調がさらに悪化する。
●身体症状:頭痛、肩こり、胃腸の不調などが続くことがある。
●感情の不安定さ:小さなことでも過剰に反応し、イライラすることが多くなる。

これらの症状が長期間続く場合、専門的なサポートを受けることが重要です。放置すると、症状が悪化し、日常生活に支障をきたすことになります。

更年期うつへの対処法

親の介護や死別という重い負担を抱えながら、更年期うつに対処するためには、以下のような方法が効果的です:

  • 自分自身のケア

    介護をしている場合でも、自分自身の体調や感情を無視してはいけません。定期的にリラックスできる時間を作り、趣味や好きなことをすることが重要です。身体的には、軽い運動や深呼吸、ヨガなどが心身の緊張をほぐし、精神的なリフレッシュになります。

 

  • サポートを求める

    介護や家族の死別に関する感情を一人で抱え込まず、家族や友人、専門家に相談することが大切です。カウンセリングや精神科のサポートを受けることで、心の整理ができ、うつ症状の軽減が期待できます。

 

  • 心療内科でのサポート

    更年期うつが重度になった場合、心療内科での治療が必要です。カウンセリングや薬物療法を通じて、症状を軽減することができます。また、更年期に特有の身体的な症状に対しても、適切なアドバイスを受けることができます。

 

  • 介護の負担軽減

    可能であれば、介護の負担を家族や外部のサポートに分担することを検討しましょう。介護保険や地域の支援サービスを利用することで、物理的な負担が軽減され、精神的にも安定しやすくなります。

まとめ

親の介護、看取り、死別という人生の大きな試練に直面することは、誰にとっても大きな心の負担です。更年期を迎える女性にとっては、これらの負担が精神的な健康に深刻な影響を与え、うつ症状を引き起こすことがあります。しかし、適切なケアやサポートを受けることで、乗り越えられない試練はありません。自分自身のケアを怠らず、必要なサポートを求めることで、心身の健康を保ちながら、家族や自分自身の生活を支えることができるでしょう。

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福永伴子

福永伴子

順天堂大学医学部を卒業後、大学病院やクリニック等で精神科・心療内科医として勤務。2011年ともクリニック浜松町を開院。

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