「なんとなく不調が続いているけれど、原因がわからない」「気分の浮き沈みや体のだるさがあっても、誰に相談すればいいのかわからない」――そんなお悩みを抱える女性は少なくありません。
とくに30代以降の女性にとって、PMS(月経前症候群)や更年期症状、そして自律神経失調症といった体と心の不調は、非常に身近なテーマです。しかし、それぞれの症状が重なり合うこともあり、「自分の不調はどれに当てはまるのか」がわかりにくいことがあります。
本記事では、医師による解説のもと、PMS・更年期・自律神経失調症の違いや、それぞれの特徴、見分けるポイントについてご紹介します。原因を正しく理解し、必要に応じて適切な医療機関を受診するきっかけになれば幸いです。
PMS(月経前症候群)とは?
PMSの主な症状
PMSは、月経前の3〜10日間に現れる心身の不調を指し、月経が始まると軽くなる、または消失するのが特徴です。症状には以下のようなものがあります:
- イライラや怒りっぽさ
- 気分の落ち込み、涙もろさ
- 頭痛、腹痛、乳房の張り
- 疲労感や眠気
- 食欲の変化(過食、甘いものが食べたくなる など)
PMSの症状は20代後半から30代にかけて強くなる傾向がありますが、個人差が大きく、症状の出方や重さも人それぞれです。

PMSの原因
PMSは、排卵後に分泌される女性ホルモン(黄体ホルモン=プロゲステロン)と、脳内神経伝達物質のバランス変化が関係していると考えられています。とくにセロトニンという神経伝達物質の働きが低下すると、気分の不安定さやイライラなどの症状が出やすくなります。
更年期とは?
更年期の時期と症状
更年期は、閉経をはさんだ前後約10年間(一般的には45〜55歳頃)を指します。この時期は、卵巣機能の低下により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が大きく変化します。
更年期にみられる症状は「更年期症状」と呼ばれ、その中でも日常生活に支障をきたすほどのものを「更年期障害」といいます。
- ホットフラッシュ(急に顔がほてる、汗が出る)
- 動悸、息切れ
- 倦怠感、疲れやすい
- 不眠、寝つきが悪い
- 不安感、気分の落ち込み
- 頭痛、肩こり、めまい など
更年期の特徴的な変化
更年期の不調は、女性ホルモンの急激な減少に体がついていけないことが主な原因です。エストロゲンは自律神経や感情のコントロールにも関わっているため、その減少によって身体的・精神的にさまざまな不調が起こります。

自律神経失調症とは?
自律神経の働きと乱れたときの症状
自律神経は、呼吸、血圧、体温調節、消化など、私たちの意志とは関係なく働いている神経系です。交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、心身にさまざまな不調が現れます。
代表的な症状には以下のようなものがあります:
- めまい、ふらつき
- 動悸、胸の圧迫感
- 胃腸の不調(下痢・便秘)
- 倦怠感、疲労感
- 不安感、イライラ
- 睡眠障害(寝つきが悪い、途中で目が覚める)
原因と背景
自律神経失調症の原因はさまざまですが、主に以下のような要因が重なることで発症しやすくなります:
- ストレスの蓄積
- 不規則な生活習慣
- 環境の変化(転職、引っ越し、家庭内のストレスなど)
- ホルモンバランスの変化
特に女性は、ライフステージの中でホルモンバランスが大きく変化することから、自律神経が乱れやすく、不調が続きやすい傾向にあります。

PMS・更年期・自律神経失調症の見分け方
3つの症状は一見似ている部分もありますが、発症のタイミングや症状の現れ方に注目することで、ある程度見分ける手がかりになります。
項目 | PMS | 更年期 | 自律神経失調症 |
---|---|---|---|
主な年代 | 20代後半〜40代 | 45〜55歳前後 | 年代を問わず(特にストレスが多い時期) |
発症タイミング | 月経前に毎月繰り返し | 閉経の前後に徐々に | 時期や周期に関係なく起こる |
主な症状 | イライラ、情緒不安定、眠気、腹痛、むくみなど | ホットフラッシュ、動悸、不眠、不安感など | めまい、動悸、胃腸症状、不眠など多様 |
改善のタイミング | 月経が始まると軽くなる | 時期により数か月〜数年続くことがある | 改善にはストレス対策や生活習慣の見直しが必要 |
このように、「月経との関係」や「年齢」、「症状の持続性」に着目することで、どの不調が該当するのかの目安になります。
受診の目安と適切な診療科
「ただの疲れかな?」「年齢的に仕方ないかも」と思っても、日常生活に支障をきたしている場合は受診を検討しましょう。以下のような状態に当てはまる場合、医療機関への相談がおすすめです。
こんなときは受診を
- 同じような不調が毎月繰り返される(PMSの可能性)
- 45歳以上で突然体調が不安定になった(更年期の可能性)
- 気持ちや体の不調が長引いて、日常生活に支障が出ている(自律神経の乱れの可能性)
受診先の目安:
- 月経に関連した不調 → 婦人科
- 更年期の症状が疑われる場合 → 婦人科または更年期外来
- 精神的・身体的な不調が長く続く → 内科、精神科・心療内科、または女性専門外来
まずはかかりつけの内科や婦人科など、身近で相談しやすい医療機関に相談するのがよいでしょう。必要に応じて、適切な診療科を紹介してもらえる場合もあります。
不調とうまく付き合うために:セルフケアのヒント
症状が軽い場合や、医師の診察を受けながら併せて行えるセルフケアも効果的です。
- 生活リズムを整える:起床・就寝時間を一定にし、規則正しい生活を心がけましょう。
- バランスの良い食事:栄養バランスを意識し、血糖値の急激な上下を防ぐ食事が有効です。
- 適度な運動:ウォーキングやストレッチなど、軽い運動で自律神経のバランスが整いやすくなります。
- ストレスケア:リラックスできる時間を確保し、趣味や深呼吸、マインドフルネスなどもおすすめです。
- 睡眠の質を高める:スマートフォンの使用を寝る前に控える、就寝前のカフェイン摂取を控えるといった工夫も有効です。
ただし、セルフケアで改善が見られない場合は、医療機関を受診することが大切です。
まとめ
PMS、更年期、自律神経失調症はいずれも女性にとって身近な不調であり、重なって起こることも珍しくありません。似たような症状でも、原因や対応方法が異なるため、「何が原因なのか」を正しく見極めることが重要です。
本記事では、医師による解説をもとに、各症状の特徴と見分け方をご紹介しました。不調を感じたときに、「自分だけがつらいわけじゃない」と知ること、そして「我慢せず相談していいんだ」と思えることが、受診への第一歩です。
日常の不調を「仕方ない」とあきらめず、医療機関に相談することで、より快適な毎日を取り戻せる可能性があります。少しでも気になる症状がある方は、ぜひ早めの受診をご検討ください。
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