「朝起きても疲れが取れない」「仕事に行くのがつらい」「気分が落ち込みやすくなった」
こうした不調を感じている方は、もしかすると“夜勤うつ”の状態かもしれません。
特に警備職の方は、24時間体制での勤務や深夜のシフトが多く、生活リズムが乱れやすい環境にあります。その影響で心身に不調をきたしやすく、うつ状態に陥るケースも少なくありません。
本記事では、医師が夜勤によるうつのメカニズムを解説し、セルフチェックのポイントや、無理なく取り入れられる対処法についてご紹介します。
なぜ警備職に“うつ”が多いのか?夜勤との関係
警備職は他の職種と比べても夜勤や不規則勤務が多く、交代制勤務が基本となる職場環境です。こうした勤務体系は、心身に大きなストレスを与える要因となります。
夜勤が心と体に与える影響
体内時計の乱れ
人間の身体には「サーカディアンリズム(概日リズム)」と呼ばれる体内時計があります。夜勤が続くことでこのリズムが狂い、睡眠の質が下がったり、ホルモンバランスが崩れることがあります。
日照不足
昼夜逆転の生活が続くと、日光を浴びる機会が減り、脳内のセロトニン(感情を安定させる神経伝達物質)の分泌が不足します。これがうつ状態を引き起こす一因となります。
社会的孤立感
夜勤により家族や友人と生活リズムが合わなくなり、孤独を感じやすくなることも。心理的なサポートを受けづらくなる環境も、メンタル不調につながります。
“夜勤うつ”セルフチェック項目
以下は、夜勤によるうつ状態を疑う際にチェックしていただきたい項目です。3つ以上当てはまる場合は、心の不調が進行している可能性があります。
- 朝、布団から出るのがつらく、仕事に行く気力がわかない
- 寝ても疲れが取れず、常に身体が重い
- 以前楽しめていたことに興味が持てない
- 食欲がない、または過食気味になっている
- イライラしたり、涙もろくなったりする
- 些細なことで自分を責めてしまう
- 「自分は役に立たない」と感じることが増えた
- 頭痛や胃の不調、肩こりなどの身体症状が続いている
これらの症状は、うつ状態のサインであるとともに、体内のリズムやストレスの蓄積によっても引き起こされます。
夜勤うつを防ぐ・改善するためのセルフケア
夜勤をやめることが難しい場合でも、日々の生活の中で取り入れられるセルフケアによって、心身の負担を軽減することは可能です。
1. 睡眠環境の見直し
- 遮光カーテンやアイマスクの活用:日中でもしっかり眠れるよう、外からの光を遮る工夫をしましょう。
- 同じ時間帯に寝起きする習慣を意識:不規則になりがちな生活リズムを安定させることで、体のリズムも整いやすくなります。
2. 起床後の“光”の活用
起床後すぐにカーテンを開けて日光を浴びるか、光目覚ましなどを活用して体内時計のリセットを行いましょう。日光はセロトニン分泌を促すため、精神的な安定にもつながります。
3. 栄養バランスの見直し
夜勤明けは食事を抜いたり、偏った食生活になりがちです。脳の働きに関係するビタミンB群や、気分を安定させるトリプトファン(大豆・乳製品・バナナなど)を意識的に取り入れましょう。
4. 軽い運動やストレッチ
激しい運動でなくても、仕事の合間や帰宅後に軽いストレッチやウォーキングを取り入れることで、血流が改善し、心身のリフレッシュにつながります。
5. 信頼できる人に話す・相談する
孤独感を感じている場合は、身近な人に話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。また、医療機関での相談もひとつの選択肢です。
受診の目安と医療機関でできること
セルフケアを試しても不調が改善しない場合や、上記のセルフチェックに多数該当する場合は、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
医療機関では、以下のようなサポートを受けることが可能です。
- 不調の背景にある体調・生活習慣の確認
- 必要に応じた血液検査や心理検査
- 医師によるカウンセリングや薬物治療の提案
- 今後の勤務形態や生活習慣の見直しに関するアドバイス
早期に相談することで、より軽いうちに症状をコントロールできる可能性が高まります。
まとめ
警備職をはじめとする夜勤のある仕事は、どうしても心身に負担がかかりやすいものです。“夜勤うつ”は誰にでも起こり得るものであり、決して「気のせい」や「甘え」ではありません。
不調に気づいたら自分を責めず、まずは自分の心と体に目を向けることが大切です。セルフチェックとセルフケアを活用しながら、必要であれば早めに医療機関を受診してみてください。
医師と一緒に、自分に合った働き方やケア方法を見つけていきましょう。
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