育児や家事、仕事に追われる日々の中で、「眠っているはずなのに疲れが取れない」「朝起きた瞬間からだるい」といった不調を感じていませんか?それは、単なる育児疲れではなく、“隠れ不眠”が関係しているかもしれません。
不眠といえば「眠れないこと」を指すイメージがありますが、実は本人が自覚しにくい不眠の形も存在します。
本記事では、女性に多い“隠れ不眠”の特徴や原因、そして日常生活でできる対処法について、医師の視点からわかりやすく解説します。
「隠れ不眠」とは?──気づかれにくい睡眠のトラブル
「隠れ不眠」とは、夜にある程度の時間は眠れているものの、睡眠の質が低下しており、疲れや不調が取れない状態を指します。寝つきが良くても、深い眠り(ノンレム睡眠)が十分に取れていないと、脳や体の回復が不十分になってしまうのです。
よくある“隠れ不眠”のサイン
以下のような症状がある場合、隠れ不眠の可能性があります。
- 朝起きてもスッキリしない
- 日中に強い眠気や集中力の低下がある
- 些細なことでイライラしやすくなった
- 夜中に何度も目が覚める
- 頭痛や肩こり、胃の不調が続いている
これらの症状は、睡眠の質が落ちているサインです。慢性的に続くようであれば、単なる疲労や加齢のせいと片付けずに、医療機関への相談も検討しましょう。

なぜ女性に“隠れ不眠”が多いのか?
女性は、男性に比べてライフステージごとのホルモンバランスの変化や多様な役割によるストレスの影響を受けやすい傾向があります。特に以下のような背景が、“隠れ不眠”を引き起こす要因となっています。
1. 育児や介護による睡眠の中断
赤ちゃんや子どもの夜泣き、体調不良への対応、また高齢の親の介護などで夜間の睡眠が中断されやすいのが、子育て世代の女性です。睡眠が分断されると、深い眠りに到達しにくくなり、眠っていても疲れが取れない原因になります。
2. ホルモンの影響
月経周期、妊娠・出産、更年期など、女性は一生の中でホルモン変動を何度も経験します。とくに、エストロゲンやプロゲステロンの分泌が変化する時期は、自律神経や睡眠リズムにも影響し、不眠を引き起こしやすくなります。
3. マルチタスクによる脳の過活動
仕事、家事、育児を同時進行でこなすことが求められる女性は、1日を通して脳が休まる時間が少ないことも。“頭が冴えて寝つけない”“疲れているのに眠れない”という状態に陥ることがあります。
眠れないのに気づかない?隠れ不眠が見過ごされやすい理由
“隠れ不眠”が見逃されやすい理由の一つは、「眠れている」と思い込んでしまう点にあります。特に、育児や介護の合間を縫って短時間でも眠れていれば「寝ているから大丈夫」と感じやすいものです。
また、女性は「自分のことは後回しにしがち」で、日常的な不調に慣れてしまい、睡眠の問題として認識できないまま過ごしているケースも少なくありません。
しかし、睡眠の質の低下は心身に大きな影響を与え、放置するとうつ病や自律神経失調症などにつながる可能性もあるため、早めの気づきと対応が大切です。
“隠れ不眠”へのセルフケア対策
隠れ不眠の改善には、日々の生活習慣を整えることが基本です。以下のような工夫が、睡眠の質を高める助けになります。
1. 就寝前のスマホ・テレビは控える
ブルーライトは脳を覚醒させ、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を妨げます。寝る1時間前にはスマートフォンやテレビ、PCの使用を控えるようにしましょう。照明も明るすぎず、暖色系のライトにするのがおすすめです。
2. 毎日同じ時間に起きる・寝る
体内時計を整えるためには、起床と就寝の時間を一定に保つことが大切です。休日の“寝だめ”は体内リズムを乱す原因になるため、なるべく平日と同じ時間に起きるよう心がけてください。
3. 寝る前にリラックスする習慣を
就寝前に心と体を落ち着かせることで、より良い睡眠に導かれます。ぬるめの入浴(38~40℃程度)や軽いストレッチ、アロマの活用などが有効です。
4. カフェイン・アルコールの摂取に注意
カフェインは覚醒作用があり、午後以降の摂取は睡眠の質を下げる可能性があります。また、アルコールは一時的に眠気を誘うものの、浅い眠りを増やし途中覚醒の原因になるため注意が必要です。
5. 短時間でも「自分だけの時間」を持つ
ストレスが多い日常の中で、自分をいたわる時間はとても重要です。深夜に頑張って自由時間を確保するのではなく、日中や早めの時間に少しでも気分転換できる工夫を取り入れましょう。

医療機関でのアプローチ──相談のタイミングと受診先
セルフケアで改善しない場合や、長期間にわたって不調が続く場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
どこに相談すればいい?
不眠に関する相談は、まずは内科や心療内科が窓口となります。女性特有のホルモンの影響が疑われる場合には、婦人科の受診も選択肢の一つです。医師が症状の背景を丁寧に聞き取り、必要に応じて検査や治療を行います。
医師による治療の選択肢
医師による不眠の治療は、症状の程度に応じて異なります。代表的なものとして以下のような方法があります。
- 生活習慣の見直しや睡眠衛生指導
- ストレスや不安に対するカウンセリングや薬物療法
- ホルモンバランスの調整(更年期障害などの場合)
特に“隠れ不眠”の場合は、表面的には睡眠時間が足りているように見えるため、丁寧な問診や生活背景の確認が重要になります。
「よく眠れているはずなのに調子が悪い」──それは体からのサインかもしれません
睡眠は、健康な心と体を保つための基礎です。しかし日々の忙しさや責任感の強さから、「眠れているから大丈夫」「我慢すれば何とかなる」と、自分の不調を後回しにしていませんか?
隠れ不眠は、周囲からも気づかれにくく、本人も「ただの疲れ」と受け止めてしまいがちです。しかし、不調が長引くと心身のバランスを崩すきっかけになることもあります。
まとめ
“隠れ不眠”は、眠っているつもりでも疲れが取れない、体調がすぐれないといった女性に多くみられる状態です。ホルモンバランスや育児・介護といった生活背景が影響していることも多く、単なる睡眠不足とは異なります。
まずは生活習慣を整えることから始め、それでも改善しない場合は医療機関への相談を検討することが大切です。
「睡眠は健康のバロメーター」。自分の体からのサインを見逃さず、無理をしすぎないことが、心と体の健やかさにつながります。
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