IT業界で働くシステムエンジニア(SE)の中には、夜遅くまでの残業や突発的なトラブル対応によって、慢性的な睡眠不足に悩んでいる方が少なくありません。特にプロジェクトの納期が迫る時期や、システムの障害対応などが発生すると、生活リズムが崩れやすく、気づかないうちに「睡眠障害」に発展しているケースもあります。
本記事では、SEの仕事が睡眠にどのような影響を与えるのかを明らかにしながら、睡眠障害が健康に及ぼすリスク、そして医療機関でできる対処法や日常生活で取り組める改善策について、医師が解説します。
SEという職業が抱えやすい「眠りの問題」
SEの業務には、納期の厳守、クライアント対応、システムトラブルへの即応といった「時間に縛られるストレス」がつきものです。こうした環境では、以下のような睡眠の問題が起こりやすくなります。
- 寝つきが悪い(入眠障害)
- 夜中に目が覚める(中途覚醒)
- 朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
- 十分に眠った気がしない(熟眠障害)
これらは「不眠症」の代表的な症状であり、慢性的に続くと心身に深刻な影響を与えることがあります。

睡眠障害が引き起こす健康リスク
睡眠不足が続くと、単なる「眠気」だけでは済まされません。集中力や判断力の低下に加え、以下のような健康リスクも高まります。
- 自律神経の乱れ
- 慢性的な疲労感や倦怠感
- うつ病や不安障害などのメンタル不調
- 高血圧や糖尿病など生活習慣病のリスク増加
特に、自律神経のバランスが崩れることで、日中のパフォーマンスが著しく低下するだけでなく、内臓や免疫機能にも影響を及ぼすと考えられています。
SEの睡眠障害に見られる特徴
SEの方が睡眠障害に悩む場合、以下のような要因が背景にあることが多いとされています。
1. 長時間労働と不規則な勤務
深夜までの作業や、土日も稼働が求められるような業務スケジュールは、体内時計を大きく狂わせます。交代勤務のような明確なリズムがなく、予測不可能な勤務は特に影響が大きいです。
2. 精神的プレッシャーと緊張状態
納期へのプレッシャーや、突発的な障害への即応が求められる環境では、脳が休むタイミングを失いがちです。「ベッドに入っても頭が冴えて眠れない」と訴える方も多くいます。
3. 長時間のPC使用とブルーライト
寝る直前までモニターを見ることで、脳が覚醒状態になり、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が妨げられます。自然な眠気が起こりにくくなり、入眠障害を引き起こします。

医療機関での対応:受診の目安と治療
もし以下のような状態が2週間以上続く場合は、医療機関の受診を検討してください。
- 毎晩寝つきに1時間以上かかる
- 夜中に何度も目が覚める
- 睡眠時間は取れているのに、日中強い眠気がある
- 気分の落ち込みやイライラが強まってきた
医師による診察では、生活習慣や仕事環境のヒアリングを通じて、背景にある要因を丁寧に探ります。必要に応じて、睡眠薬や漢方薬を使った治療、認知行動療法などが検討されることもあります。
自分でできる改善策と工夫
睡眠障害の改善には、生活習慣の見直しも大切です。すぐに取り入れられるポイントをいくつかご紹介します。
1. 寝る1時間前は「デジタル断ち」
スマートフォンやパソコンの使用を控え、間接照明でリラックスできる環境をつくるよう心がけましょう。
2. 毎日同じ時間に起きる
休日でも起床時間をできるだけ一定に保つことで、体内時計が整いやすくなります。
3. コーヒーやエナジードリンクは夕方以降避ける
カフェインは覚醒作用が強いため、夕方以降の摂取は入眠を妨げる原因になります。
4. 軽い運動やストレッチを習慣に
運動は心身の緊張をほぐし、深い睡眠を促す作用があります。寝る前のストレッチや、朝のウォーキングなどが効果的です。

まとめ
システムエンジニアという職業は、高い専門性と責任感が求められる一方で、睡眠への悪影響を抱えやすい環境でもあります。睡眠障害を放置すると、体調面だけでなく、仕事のパフォーマンスやメンタルにも大きな支障をきたす可能性があります。
「最近眠れていない」「朝の目覚めがつらい」と感じたときは、まずは生活リズムの見直しから始めてみましょう。そして必要に応じて、医療機関に相談することも大切です。早めの対応が、心身の健康を守る第一歩となります。
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