夏になると「なんとなく気分が沈む」「疲れが抜けない」「やる気が出ない」と感じることはありませんか?もしかすると、それは単なる夏バテではなく、「夏季うつ(夏季うつ病)」の可能性があります。本コラムでは、夏季うつの特徴や原因、対策について医師が詳しく解説します。
夏季うつとは?
うつ病というと、寒くて日照時間が短い冬に発症しやすい「冬季うつ」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、うつ症状は夏にも現れることがあります。夏季うつは、気温や湿度の上昇、強い日差し、生活リズムの変化などによって引き起こされる季節性のうつ症状です。
冬季うつと異なり、夏季うつでは「不眠」「食欲不振」「イライラ感」などが主な症状とされます。そのため、単なる夏バテと見分けがつきにくく、気づかないまま過ごしてしまうことも少なくありません。
夏季うつの主な症状
夏季うつの代表的な症状には以下のようなものがあります。
〇 慢性的な疲労感:十分に睡眠をとっても疲れが抜けない。
〇 やる気が出ない:仕事や家事に対する意欲が低下する。
〇 不眠や睡眠の質の低下:夜眠れない、眠りが浅い、寝つきが悪い。
〇 食欲不振:特に暑い日が続くと食事を摂る気が起きなくなる。
〇 イライラしやすい:些細なことでストレスを感じやすくなる。
〇 集中力の低下:仕事や勉強に集中できない。
〇 気分の落ち込み:楽しいことをしても気持ちが晴れない。
このような症状が数週間以上続く場合は、夏季うつの可能性が高いと考えられます。
夏季うつの原因とは?
夏季うつの主な原因は、気温の上昇や日照時間の増加による自律神経の乱れと考えられています。具体的には、次のような要因が関係しています。
1. 暑さによる自律神経の乱れ
暑い環境では体温調節のために自律神経がフル稼働し、疲労がたまりやすくなります。その結果、心身のバランスが崩れ、うつ症状につながることがあります。
2. 睡眠不足
暑さやエアコンの影響で睡眠の質が低下し、十分な休息が取れないことが多くなります。睡眠不足が続くと脳の機能が低下し、気分の落ち込みを引き起こしやすくなります。
3. 日照時間の影響
夏は日照時間が長いため、体内時計が乱れやすくなります。また、日差しが強すぎると逆にストレスを感じることもあります。
4. 食生活の変化
暑さで食欲が落ち、栄養バランスが崩れると、脳内のセロトニン(幸せホルモン)の分泌が低下し、気分の落ち込みにつながります。
5. 環境の変化やストレス
夏休みやお盆休みなどで生活リズムが変わることも、ストレスの原因になります。また、旅行やレジャーなど楽しいイベントが多い季節ですが、人付き合いや予定の詰め込みが負担になり、気づかないうちにストレスを溜めてしまうこともあります。
夏季うつを予防・改善する方法
夏季うつの症状を軽減するためには、生活習慣を見直し、無理なくできる対策を取り入れることが大切です。
1. 室内の温度・湿度を適切に管理する
エアコンを上手に使い、快適な室温(25~28℃)を保ちましょう。ただし、冷房の効きすぎには注意し、体を冷やしすぎないようにすることも大切です。
2. 規則正しい生活を心がける
朝起きる時間と寝る時間を一定にし、体内時計を整えましょう。特に朝はしっかりと太陽の光を浴びることで、自律神経が整いやすくなります。
3. 食生活を見直す
暑さで食欲が落ちる時期ですが、バランスの良い食事を心がけましょう。特に、ビタミンB群やタンパク質を意識的に摂取すると、脳の機能が活性化され、気分が安定しやすくなります。
4. 適度な運動を取り入れる
激しい運動でなくても、朝や夕方の涼しい時間帯に軽いストレッチやウォーキングを行うと、心身のリフレッシュにつながります。
5. 無理をしすぎない
夏は何かと予定を詰め込みがちですが、自分の体調を優先し、休息を取ることも大切です。「疲れた」と感じたら、無理せず休むことを意識しましょう。
6. 心の不調を感じたら医療機関に相談する
夏季うつは放置すると慢性化することがあります。症状が長引く場合は、心療内科や精神科を受診し、医師に相談することをおすすめします。
まとめ
夏季うつは、単なる夏バテとは異なり、精神的な不調を伴うことが特徴です。
「疲れが取れない」「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といった症状が続く場合は、夏季うつを疑い、生活習慣を見直してみることが大切です。
また、症状が改善しない場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
心と体のバランスを整えながら、無理なく夏を乗り切る工夫をしていきましょう。
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