テレビやスマートフォンで災害のニュースを見て、胸が締めつけられるような感覚を覚える。
SNSで流れる被災地の映像に涙が出てしまう。
こうした反応は、決して「気が弱いから」ではなく、自然で人間的な感情です。
しかし、その不安や恐怖が長く続く場合、心の中に「トラウマ反応」が起きている可能性があります。
本記事では、災害報道が心に与える影響と、つらい気持ちを和らげるための回復のヒントを医師がお伝えします。
災害報道が心に与える心理的影響
1. “共感疲労”と“二次的トラウマ”
被災していなくても、被災者の映像や声を繰り返し見ることで、心が被害体験を“共感”してしまうことがあります。
これを「共感疲労(コンパッション・ファティーグ)」や「二次的トラウマ」と呼びます。
優しく思いやりのある人ほど、「自分も何かしなければ」「助けたいのに何もできない」と感じ、
罪悪感や無力感に苦しむ傾向があります。
2. 体の反応としての“ストレス症状”
災害報道を見ていると、知らず知らずのうちに体も緊張状態になります。
交感神経が優位になることで、心拍数の上昇・手の震え・浅い呼吸・睡眠障害などが現れることもあります。
これが長く続くと、心だけでなく体も疲弊してしまうのです。
トラウマ反応とは?
トラウマとは、心が強い衝撃を受け、危険が去ったあとも恐怖の記憶が残ってしまう状態です。
災害報道をきっかけに、過去のつらい出来事がよみがえる場合もあります。
トラウマ反応の主なサイン
- 災害関連の映像や音を避けるようになる
- 不意の地震速報などで強い動悸が起きる
- 夜眠れない、悪夢を見る
- 体がこわばる、過度に警戒してしまう
- 気分の落ち込みや無気力感が続く
こうした反応が2週間以上続く場合は、心が助けを求めているサインかもしれません。
不安を和らげるためのセルフケア
1. 情報の取りすぎを防ぐ
災害報道やSNSを見続けると、脳が「危険が今も続いている」と錯覚します。
1日の中で情報を見る時間と回数を決めることで、心への負担を減らせます。
特に寝る前のニュースチェックは避けましょう。
2. 深呼吸と体のリラックス
強い不安を感じたときは、呼吸が浅くなりがちです。
「息を4秒で吸って、6秒で吐く」ペースでゆっくり呼吸を続けましょう。
軽いストレッチや温かいお風呂も、自律神経を落ち着かせる効果があります。
3. “安心できる時間”を意識的につくる
不安なニュースが多いときこそ、心が安らぐ時間をつくることが大切です。
好きな音楽を聴く、温かい飲み物を飲む、自然の映像を見るなど、安心を感じる行動を取り入れましょう。
4. 誰かに話す
不安や恐怖を一人で抱え込むと、気持ちはどんどん大きくなってしまいます。
信頼できる人に話すことで、心の負担が軽くなり、気持ちの整理にもつながります。
家族や周囲ができるサポート
身近な人が災害報道を見て不安そうにしているときは、無理に励まさず、まずは話を聴くことが大切です。
「怖かったね」「心配だよね」と共感の言葉をかけ、安心できる環境をつくりましょう。
子どもの場合は、抱きしめる・一緒に遊ぶなど、言葉以外のスキンシップも効果的です。
医療機関を受診したほうがよいサイン
次のような状態が2週間以上続く場合は、心療内科での相談をおすすめします。
- 強い不安や恐怖感が続いている
- ニュースを見なくても動悸や緊張が起きる
- 不眠や悪夢が続く
- 気分の落ち込み、涙もろさ、無気力感
- 仕事や家事など日常生活に支障が出ている
専門家によるカウンセリングや治療で、心の回復をサポートすることが可能です。
まとめ
災害報道を見て不安を感じるのは、正常で自然な人間の反応です。
ただし、その不安が長く続いたり、生活に支障が出ている場合は、無理をせず早めに相談しましょう。
心のダメージは目に見えませんが、きちんとケアすれば回復できます。
必要な情報だけを取り入れ、心が休まる時間を持つこと──それが“心の防災”の第一歩です。
あわせて読みたい
>【医師監修】線状降水帯など災害報道を見ると不安になる…“天気と心”の密接なつながりとは
>【医師監修】地震報道と心のケアの大切さ
>【医師監修】「過去の出来事が今も苦しい」トラウマのサインとは?
2026.01.09
【医師監修】地震報道と心のケアの大切さ
地震のニュースや緊急速報が流れると、胸がドキッとしたり、息が詰まるような感覚を覚えることはありませんか? それは決して「気が弱いから」「心配性だから」ではなく、人間としてごく自然な反応です。 災害の映像や報道を見聞きすると、私たちの脳は「危険が近い」と判断し、心身を守るための防衛反応を起こします。...