「寝ても疲れがとれない」「気分が落ち込みやすい」「なんとなく体がだるい」——そんな心や体の不調が続くと、「どこか病気なのでは…」と不安になることもあるかもしれません。
こうした症状の背景にある原因のひとつとして考えられるのが、「自律神経失調症」です。
自律神経の乱れによって心身にさまざまな不調が現れるこの状態は、現代のストレス社会では誰にでも起こりうるものです。
本記事では、自律神経失調症とはどのような状態なのか、どのような生活習慣が関係しているのかを、医師の視点からわかりやすく解説します。
日々の不調に心当たりのある方は、生活を見直すきっかけとして、ぜひお役立てください。
自律神経失調症とは?
自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れることで、心や体にさまざまな不調が現れる状態を指します。自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つから成り、私たちの体の働きを24時間体制で調整しています。例えば、交感神経は活動モードを、副交感神経は休息モードを担っています。
ところが、強いストレスや不規則な生活が続くと、このバランスが乱れ、うまく切り替えができなくなります。その結果、以下のような症状があらわれることがあります。
- 慢性的な疲労感、倦怠感
- めまい、立ちくらみ
- 動悸、息苦しさ
- 胃腸の不調(便秘・下痢・胃もたれなど)
- 頭痛、肩こり
- 不眠、眠りが浅い
- イライラや不安感
これらは病院で検査をしても「異常なし」と言われることも多く、原因がわからないまま悩み続ける方も少なくありません。
自律神経失調症のリスクを高める生活習慣
自律神経は非常にデリケートで、私たちの生活習慣と深く関わっています。ここでは、特に注意したい習慣を紹介します。
1. 睡眠不足・夜型生活
睡眠は自律神経のバランスを整えるために不可欠です。慢性的な睡眠不足や、就寝時間が不規則な生活は、交感神経が優位になりがちで、心身が休まりにくくなります。
✅対策
毎日同じ時間に寝起きする習慣を意識し、寝る前のスマホやカフェインを避けるなど、睡眠環境を整えましょう。
2. 食生活の乱れ
朝食を抜いたり、極端なダイエットを繰り返すと、エネルギー不足や栄養バランスの乱れから自律神経にも影響が出ます。特に糖質や脂質の偏りが強いと、血糖値の急激な変動がストレスを生みやすくなります。
✅対策
一日三食を心がけ、タンパク質・野菜・炭水化物をバランスよく摂取しましょう。朝食をとることで体内時計も整いやすくなります。
3. 運動不足
運動不足も、自律神経の働きを鈍らせる要因です。特にデスクワーク中心の生活で1日中ほとんど体を動かさないという方は要注意です。
✅対策
無理な運動ではなく、散歩やストレッチなどの軽い運動を毎日続けることがポイントです。朝に軽く体を動かすことで、交感神経のスイッチも入りやすくなります。
4. 慢性的なストレス
人間関係や仕事、家庭のプレッシャーなど、日常的なストレスが積み重なると自律神経は疲弊します。真面目で責任感が強い方ほど、自分を追い詰めてしまいやすい傾向があります。
✅対策
定期的に「何もしない時間」を作ったり、自分がリラックスできる方法(音楽・入浴・趣味など)を持つことが大切です。
5. スマホ・パソコンの使いすぎ
就寝直前までスマホを見たり、長時間のパソコン作業は脳を刺激し、交感神経を優位にしてしまいます。特にブルーライトは眠りの質を低下させ、自律神経の乱れに直結します。
✅対策
眠る1時間前は「デジタルデトックス」の時間とし、間接照明の部屋でゆったり過ごすようにしましょう。
特に注意が必要な人の傾向
以下のような特徴がある方は、自律神経失調症のリスクが高くなる傾向があります。
- 几帳面で責任感が強い
- 完璧主義で無理をしがち
- 人の期待に応えようと頑張りすぎる
- 自分の気持ちを抑えてしまう
- 「気分屋」と思われたくなくて我慢してしまう
こうした性格傾向は、日々のストレスに気づきにくく、ある日突然強い不調として現れることもあります。
不調が続くときは、早めの相談を
「気のせいかな」「ちょっと疲れてるだけかも」と見過ごされがちな自律神経の不調ですが、放置すると悪化し、生活に支障をきたすこともあります。自己判断せず、まずは内科や心療内科などの医療機関に相談してみましょう。
特に以下のような状態が続く場合は、一度受診を検討してください:
- 日常生活に支障が出るほどの体調不良が1ヶ月以上続く
- 不安やイライラがひどく、気分が落ち込む
- 睡眠障害が続いている
- 複数の症状があって、どの科に行けばよいか迷っている
まとめ
自律神経失調症は、「特定の病気」ではなく、体と心のバランスが崩れた状態です。睡眠や食事、運動、ストレスとの付き合い方など、毎日の生活が大きく影響します。
まずはご自身の生活を振り返り、「ちょっと無理をしていないかな?」「休む時間はとれているかな?」と自分に問いかけてみてください。そして、不調が続く場合は、早めに医療機関を受診することが健康回復の第一歩です。
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