突然、心臓がドキドキと激しく脈打ち、息が苦しくなって「このまま倒れてしまうのでは」と感じたことはありませんか?
こうした症状は、身体的な疾患だけでなく「パニック障害」が関係している可能性があります。
本記事では、医師がパニック障害の症状や原因、治療法、受診のタイミングについてわかりやすく解説します。
「これは心臓の病気?」「どこに相談すればいいの?」とお悩みの方に向けて、安心して受診につながるような情報をお届けします。
パニック障害とは?
パニック障害は、突然激しい不安や恐怖に襲われる「パニック発作」を繰り返す心の病気です。発作が起きると、命に関わるのではと感じるような強い動悸や息苦しさ、めまい、発汗などが現れます。しかし、実際に検査をしても身体に異常が見つからないことが多く、「気のせいでは」と誤解されてしまうこともあります。

主な症状
パニック発作では、以下のような症状が突然現れます。
- 激しい動悸(心臓がドキドキする)
- 息切れ、息苦しさ(空気が吸えない感覚)
- めまいやふらつき
- 手足のしびれや震え
- 発汗、寒気
- 胸の痛みや圧迫感
- 「このまま死んでしまうのでは」という強い不安
これらの症状は、数分から30分程度で落ち着くことが多いですが、初めて経験する方にとっては非常に怖い体験となります。
原因とメカニズム
パニック障害は、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスの乱れが関係していると考えられています。また、以下のような要因が発症に関係すると言われています。
- 強いストレスや過労
- 不安になりやすい性格傾向
- 身近な人の死や離別などの喪失体験
- ホルモンバランスの変化(特に更年期の女性に多い傾向があります)
パニック障害は、心理的な問題だけでなく、生物学的な要因も関係しているため、本人の「気の持ちよう」や「弱さ」のせいではありません。

「心臓の病気では?」と不安になる理由
パニック発作の症状は、心臓発作や不整脈などの循環器系疾患と非常によく似ています。そのため、最初は循環器内科や救急外来を受診される方も少なくありません。
検査で異常がなかった場合、「どこに相談すればいいの?」と悩まれる方も多いのが現状です。もし、何度も似たような発作を繰り返している、決まった状況で不安が強くなるなどの傾向がある場合は、パニック障害の可能性も考慮し、心療内科や精神科など専門の医療機関に相談することが大切です。
パニック障害の診断と治療
診断について
診断は、医師との問診が中心になります。発作の様子や頻度、生活への支障の有無などを詳しく確認し、必要に応じて血液検査や心電図などで他の病気との鑑別を行います。
治療方法
パニック障害の治療は、主に以下の2つを組み合わせて行います。
1. 薬物療法
抗うつ薬(SSRIなど)や抗不安薬を使用することで、神経伝達物質のバランスを整え、発作の頻度や不安感を軽減します。薬は医師の指示のもと、少量から始めて慎重に調整していきます。
2. 精神療法(認知行動療法など)
パニック発作に対する不安な捉え方や行動のパターンを見直し、少しずつ不安に対処できるよう支援します。発作への対処方法を学ぶことで、自信を取り戻していくことが期待できます。
放置しないで…パニック障害が生活に及ぼす影響
適切な治療を受けずにいると、「また発作が起きたらどうしよう」と不安になり、外出や人混みを避けるようになります。これを予期不安といい、重症化すると「広場恐怖」などの二次的な問題が生じることもあります。
日常生活に支障が出る前に、早めに医療機関へ相談し、適切な治療を始めることが回復への第一歩です。

まとめ
突然の動悸や息切れは、体の病気だけでなく「パニック障害」の可能性も考えられます。検査で異常が見つからない場合でも、症状に悩まされているなら、ひとりで抱え込まず、心療内科や精神科などの医療機関へご相談ください。
パニック障害は、適切な治療によって回復が十分に期待できる病気です。安心して毎日を過ごすためにも、「もしかして」と思ったタイミングで、早めの受診をおすすめします。
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